セッキーのChoice Is Yours

元映写技師による映画紹介

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・日本公開:2020110

・制作国:韓国

・監督、脚本:ポン・ジュノ

・配給会社:CJエンタテインメント

・出演:ソン・ガンホ

    イ・ソンギュン 

    チョ・ヨジョン

    チョ・ウシク

    パク・ソダム

    



『パラサイト』観てきました!平日の朝910分からの回だったのですが、なんと満席。客層は若い人から年配の方まで幅広い層でしたね。


本作はカンヌでパルムドールをとり、アメリカでは外国語映画の歴代興収1位を記録し、さらにアカデミー賞の作品賞にノミネートされているというともあって、映画ファン以外からも高い注目を集めているのでしょう。


僕も大好きなポン・ジュノの新作ということで、物凄く楽しみにしておりました。

正直、期待値が高すぎて、その高すぎるハードルを上回ることができるか不安ではありましたが、これが期待を遥かに超える大傑作でした!


本作はまずボロボロの半地下の賃貸に住む貧しい家族が描かれます。家族構成は、学歴はないですが勉強ができる長男と、お金がなくて美大に行けない長女と、商売に失敗して失業中の父と、元ハンマー投げの選手だった母の4人家族です。全員仕事が無くて一日中家にいて、飢えに苦しんでいるんですね。これだけ苦しそうだと重たいトーンの映画だと思われますが、コメディなんですね。

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こんな辛い状況の中でも彼らは、家の中で無料の
Wifiを必死に探したり、路上で消毒剤が散布されていたら窓を開けてついでに家の中も消毒しようとしたり、とにかくたくましい。そして同時にこの一連のシーンが笑えるんですね。とくにこの父親の立ち居振る舞い自体が、神がかり的におかしくて、彼が映るたびに劇場から笑い声が溢れました。この父を演じるのが韓国映画でお馴染みの名優ソン・ガンホなんですが、もう彼はビル・マーレイの境地に達したのではないでしょうか。

この導入部だけで、この映画はとてつもない傑作だという確信を持ちましたね。とにかく普通の映画にはないブラックユーモアのセンスにやられました。この時点でもう100点でてます。


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そんな貧しい一家の元に長男の友達がやってきます。彼は長男に家庭教師の仕事を持ってくるんですね。彼は留学するから自分の代わりに英語の家庭教師になって欲しいと言ってきます。なんで、長男にお願いしたかと言うと、友達は自分が教えている女の子の生徒と出来ており、他の教師が手を出さないか心配なんですね。長男だったら安心して恋人を任せられると考えたからなんです。長男としても失業中だったので、喜び勇み引き受けます。


家庭教師として、生徒の家に行ってみるとこれが、見たこともないような豪邸なんですね。家政婦から案内をうけ家に入り、奥さんに会います。奥さんは若くて綺麗ですが、どこか神経衰弱気味なんですね。まずは授業の風景を見せてもらってから、採用するかを決めたいというので、娘さんへの授業を見せます。長男はどうにか娘さんに気に入られ、奥さんへの信頼も勝ち取り、家庭教師の職にありつくことができます。

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安堵する長男ですが、帰り際、家の中でインデアンの格好をして暴れる回る小さな息子を目にします。奥さんは問題をかかえる息子の教育に悩み神経衰弱になっていたんですね。奥さんは息子に絵を習わせ集中力をつけさせたいと考えており、美術の先生を探していることを長男に告げます。すると長男は妹を美術の家庭教師に仕立て事を思いつきます。ここから貧乏一家による金持ち一家へのパラサイト(寄生)が始まります。


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もうこれ以上はネタバレが怖いのでいいませんが、ここからの展開がやばいです!さらにブラックユーモアは増し、ハラハラドキドキの展開があり、終盤はとてつもないカタストロフが訪れ、最後には味わったことがないような感慨で満たされます。


ユーモアで笑わせたかと思えば、サスペンスでハラハラドキドキたのしませ、時に暗喩や象徴で考えさせ、最後には胸に刺さるメッセージがある。これが映画ですよ!

ユーモア、サスペンス、メッセージ、その全てがエンターテイメントとして高度に融合した、比類ない傑作でした。もうこれは完璧な映画なのではないでしょうか!


本作はこれまでポン・ジュノが描いてきた、家族の歪さ、日常生活の脆さ、社会構造や格差の問題、人間というものの不思議さという要素がありながら、それを極上のエンターテイメントとしてみせた、ポン・ジュノの最高傑作だと思います。


個人的には『母なる証明』からのファンですが、本当にポン・ジュノ作品を見続けてきてよかったです!

だから、映画観賞はやめられない!


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SBI FXトレード

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・日本公開:2019726

・制作国:日本

・監督、脚本:山崎貴

・配給会社:東宝

・出演:菅田将暉

    柄本祐

    浜辺美波

    笑福亭鶴瓶

    館ひろし

    橋爪功 

    國村隼




本作で監督と脚本をしているのは山崎貴。これまでの彼の作品は好きではありませんでしたが、本作の評判は非常に高く、また興味のある題材でもあったので、DVDレンタルされたこのタイミングで鑑賞いたしました。


見てみると、これがめちゃめちゃ面白い傑作でした!



まず、冒頭の巨大戦艦沈没シーンの迫力がやばいです。海上の巨大戦艦一隻の日本に対して、空から数十機の戦闘機で攻撃を仕掛けるアメリカ。戦力の差は圧倒的で、巨大戦艦からの砲撃はほとんど当たらず、蜂の巣状態で戦闘機からの爆撃を受けます。この戦闘シーンで、日本側の兵士の視点と全体の攻防を交互に見せて行くので、より緊迫感と迫力が増すように思いました。


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中でも、怯えながら砲撃をしている日本兵が攻撃なんとかかわし、隣の仲間を見ると腕しか残っていないという見せ方は本当に怖い。そしてそんな中やっと一発当てて一機落とすことができるのですが、向こうのパイロットは脱出し救出されるんですね。人命が軽んじられ玉砕覚悟の日本と、人命を第一に考えるアメリカとの違いがここで描かれていて、同時にこれが国力の差でもあるということが示されます。


また、救出されるアメリカ兵の姿をみる日本兵の目が切ないですね。彼は羨ましいのか、悔しいのか、あるいは絶望しているのか反別できません。


そして最後は戦艦の沈没。タイタニック並みのスケール感で船が見事にひっくりかえります。船から振り落とされ海に落ちる兵隊達。

この沈没で、のべ3000人の兵隊がなくなり、この冒頭だけでアメリカとの戦争が間違いであったことが理解できます。


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これは1945年の終戦の4ヶ月前に実際に起きたことですが、ここから時制が12年前に遡り、場面は1933年の海軍会議のシーンになります。


ここで議論している内容というのが、冒頭で沈没が描かれた、巨大戦艦を作るか作らないかという話し合いなんですね。議論は白熱しますが、賛成派が圧倒的多数。それに対して当時海軍少将の山本五十六がそれに反対します。それというのは、巨大戦艦ができればそれが戦意高揚の象徴となり、一気に戦争へと突き進んでしまうと考えたからなんですね。つまり「こんな戦艦があればアメリカにだって勝てる、だから戦争をしよう!」と国民に思わせることができるわけです。また山本五十六はこれからの時代は航空母艦が必要と考えていたんですね。


今にして思えば、空からの攻撃のほうが圧倒的に有利なのは火を見るよりも明らかですが、当時はわからなかったんですね。

議論は決裂し、また2週間後に決定会議が開かれることになりました。


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万事休すに思われた、山本五十六ですが、あることに気が付きます。というのも巨大戦艦の見積もり予算が、明らかに低く見積もられているんですね。

この予算の捏造を暴くことができれば、議論で優位に立つことができると考えたわけです。


しかし、材料費や人件費の内訳は機密となっており閲覧することができず、正確な見積もり予算を調べることができません。それに加えて、わずか2週間という調査時間の少なさに周りの人間はみんな匙を投げてしまいます。そこで白羽の矢がたったのが、菅田将暉扮する数学の天才、櫂直(かいただし)です。


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この櫂直ですが、相当な曲者で合理的な事以外求めようとせず、誰彼構わず自分の嫌な事は嫌とはっきり言う性分なんですね。また彼は軍人が物凄く嫌いななんですね。時に不合理だと思われても軍規や戒律を最優先にする軍人が理解できないんですね。


なので山本五十六が櫂直をスカウトにくるのですが、当然断ります。またプリンストン大学への留学が決まっていたので、自分には関係がない、こんな日本なんてどうにでもなってしまえと投げやりなんですね。


ですが渡航の日になり、船に乗りかけた櫂は船を見送る人々を見て、その人達が炎で焼け死ぬ光景を見てしまいます。彼の合理的な頭脳は彼に、アメリカと戦争した場合に起こる悲劇を彼に見せたんですね。そして彼は自分が戦争を阻止しなければならないという使命感に囚われます。


「日本がアメリカと戦争をしたら、国力で圧倒的に劣る日本は全滅してしまう。自分が巨大戦艦製造計画を阻止して、戦争を止めなければならない!」と考えたんですね。


ここの心変わりのシーンは涙が出そうなほど胸が熱くなったのですが、なんと説明によるセリフがないんですね。本当に見事だと思いました。


そんなこんなで、山本五十六らに合流し、櫂は巨大戦艦の正しい見積もり予算を出そうと奔走しますが、賛成派側からの妨害が、櫂の行く手を阻みます。

果たして櫂は見積もりの嘘を暴き、戦艦建造を阻止できるのか!?


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というのが本作のプロットなのですが、冒頭で巨大戦艦沈没のシーンがあるということは、建造を阻止できなかったということなんですよね。失敗するのがわかっているから詰まらなくなるかというと、全くそうはなりません。ヒトラー暗殺計画を描いた『ワルキューレ』は作戦が失敗に終わることを知っているので、サスペンス的な展開もイマイチ盛り上がりに欠けましたが、本作はこれとは違い、もう一つの真の巨大戦艦建造の理由という捻った仕掛けが用意されているので少しも飽きません。このツイストする展開には舌を巻きましたね。


『風立ちぬ』を連想したというと少しネタバレになりそうなので、これ以上は言いません。



唯一苦言があるとすれば、終盤の決定会議の日までに正しい見積もりを出せるかというサスペンス的な展開が少し甘いように思いました。『アルゴ』までやれとは言いませんが、もっとハラハラさせられたのではないかと思いました。ここの部分をスピルバーグが監督していたら、さらに一段上の作品になっていたのではないかと思います。なんたって『ペンタゴンペーバーズ』においては、新聞を発行できるか、できないかだけで究極のエンターテイメントを作り出せる人ですから。


ですが、本作がかなり面白い作品なのには間違いありません。

今までの山崎貴作品がこの傑作に向けた非合理な選択だったのだとしたらすべて納得が行きます。


あ、でも同時期に公開された『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はちょっとあれだったみたいですね


うーん、やはり『ペンタゴン・ペーパーズ』と『レディ・プレーヤー1』という全く違うタイプの作品を同時期に作り、どちらも傑作に仕上げたスピルバーグのようには行かないのでしょうかね。

いずれにせよ、今後もこのような作品に期待!


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SBI FXトレード

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日本公開:2019621

・制作国:日本

・監督:湯浅政明

・脚本:吉田玲子

・配給会社:東宝


去年見逃していた映画の一本。DVDをレンタルして来ました。

予告を見た限り、自分には合わない作品かなと思いましたが、『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明が監督で、『聲の形』の吉田玲子が脚本をしている作品で面白くない訳がない。

観てみると不覚にも落涙してしまいました。



前半は胸がキュンキュンするようなラブストーリー。サーフィンが得意な大学生のひな子は、ある日火事に巻き込まれ、自分を劇的に救出してくれた消防士のみなとに恋をします。

それがきっかけで二人は頻繁に会うようになり、付き合い始めます。

ドライブをして歌を歌ったり、一緒にサーフィンをしたり、また千葉ポートタワーから夜景をみたりと、GENERATIONSの「Brand New Story」にあわせ、ミュージックビデオのような編集とテンポ感で、恋人デート描写が描かれます。


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劇中で「Brand New Story」を二人で歌うシーンが何度もでてくるのですが、この曲が後半のストーリーに有機的に働いてきます。


前半の胸キュン映像の連べ打ちですが、個人的には楽しめましたが、これに乗れない人は、正直この映画が苦痛でしかないと思いますね。笑


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そんなこんなで、ひな子とみなとは恋人として、とても深く結びついていきますが、なんとみなとが、海で溺れる人を助けようとして、死んでしまうんですね。



でもこの映画が少し変わっていると思ったのは、普通ならお涙頂戴の暗いトーンの話になるところが、明るいままなんですよね。確かにみなとを失ったひな子は茫然自失となりますが、周りは明るいまま。なんかこのあたりがやけにリアルで、そんないつもの日常であり続けるからこそ、そこに居たはずの人が居ない喪失感が際立つように感じました。

いつもと変わらない日常だからこそ寂しいって感じで、正直見てて泣いてました。


で、ここからがファンタジーになるのですが、例の、よく二人で歌っていた「Brand New Story」が機能します。


ひな子はこの曲を、無意識に口ずさむと、なんと飲んでいたグラスの水の中に死んだはずのみなとが出現します。あの曲が呪文のようになり、川や海や水たまりなど、水の前でこの曲を歌うとみなとが出てくるんですね。


水の中だけとは言え、大喜びのひな子。ただし、周りの人にみなとは見えないんですね。ロマンポランスキーあたりが監督だったら、彼氏が生きているという妄執に取り憑かれた女というテーマのおどろおどろしい話になっているはずですが、本作はあくまでカラッとしているんですね。


観念として存在するならそれもよしって感じで、ひな子はみなとを入れた水筒を胸に抱えて、デートしたりします。


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このあたりはファンタジーですが、大切な人を失ったことがある人なら共感できるのではないでしょうか。その人がよく使っているものを見てその人を思い出したり、その人が夢の中に出てきたり、観念として生き続けていますよね。


そんなこんなで、立ち直ったかに見えたひな子ですが、でもやっぱり、肉体の喪失というのはいくらプラトニックな関係を結んでいたとしても、大きな問題として立ちはだかるんですね。結局ひな子にとって観念としてのみ存在するみなとは依存の対象となっていきます。みなとはこのままではひな子が不幸になると思い、自分に依存しているひな子に自立するよう促します。


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やっぱり死者に頼って生きちゃだめなんですよね。


ここからひな子はみなとに頼らないよう、自立して生きていけるように努力をしますが、なんとも健気で応援せずにはいられません。

そんな感じで、ひな子に感情移入しながら見ていましたが、終盤にある、過去からのみなとのメッセージを聞いて泣き崩れるくだりは、見ているこちらの涙腺もやばかったです。となりの部屋でパソコンをいじっていた妻に嗚咽を聞かれないように、泣くのがきつかったぐらい。


やっぱり、喪失からの再生という重いテーマをポップにエンターテイメントで見せ切るあたり、湯浅政明監督はただものではないと思いました。


今あるものを大事にしようと思わせたり、また何かを失くした人に勇気を 与えてくれるような、とても優しい映画でした。



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