【感想】『アイリッシュマン』映画史総括と新たな架け橋

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・日本公開:
2019117

・監督:マーティン・スコセッシ

・脚本:スティーヴン・ザイリアン

・配給:Netflix

・出演: 

 ロバート・デニーロ

 アル・パチーノ

 ジョー・ペシ

 ハーヴェイ・カイテル




『アイリッシュマン』やっと観れましたー!いや、本当に凄かったー。


本作の製作決定ニュースを見た時は、本当に興奮しましたね。

だって、マーティン・スコセッシ作品にデニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルを迎えてギャング映画を撮るって、もうその企画だけでご飯5杯は食べられますよ。オールスター映画ここに極まれりって感じです。


正直、3時間半という長尺にびびっていたんですが、見始めると面白過ぎてあっという間でした。



本作は実在したアイリッシュ系の殺し屋、フランク・シーランの回顧録となっており、彼の視点からアメリカ近現代史が描かれます。


第二次世界大戦、全米トラック運転組合とマフィアの癒着、キューバ危機、ケネディ大統領暗殺、ウォーターゲート事件と扱っている事件がでか過ぎて、よく3時間半でまとまったなと思うぐらいの密度でした。


フランク・シーランを演じるのは世界一の俳優といって間違いはない、御歳76歳のロバート・デ・ニーロ。

50年代からの話なので、30歳代のシーランが出てきますが、なんとデニーロがCGで若作りして出ているんですね。このあたりはやっぱり『タクシードライバー』や『ディアハンター』など、若い時のデニーロを観ているので、その時とのあまりの容姿の違いに違和感を覚えましたが、そういった事は話に引き込まれるにつれ、気にならなくなりました。また、殺しのシーンの身のこなしもスマートで、やはりデニーロが醸し出す実在感はただ事ではありませんね。


シーランはそんな激動の時代の中でマフィアのソルジャー殺し屋)として、どんどんその世界で出世して行きます。


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彼に殺しの命令を出すのはマフィアのボス、ラッセル・ブファリーノという小柄な男。演じるのはスコセッシ映画常連のジョー・ペシ。短気で凶暴な役をやらせたら彼の右にでるものはいませんが、今回はおとなしい抑えた演技に魅了されます。でも、いつキレるかわならない緊張感があって、やっぱり恐いです。『グッドフェローズ』のなかでの「funny how?」のセリフで有名な、笑ってたと思ったらいきなりキレ出すシーンの衝撃が脳裏に焼き付いてしまっているのでしょう。

見た目は大分シワシワのおじいちゃんで本当に可愛いですが、一瞬も油断なりません。


ちなみに、ジョー・ペシは本作のオファーを50回断って、長い説得のうえようやく出演となったそうですが、『グッドフェローズ』の時も転職を考えていたようでオファーを断っているんですよね。やっぱり彼の出てない『グッドフェローズ』なんて想像できないですし、本作においてもデニーロを制圧するような威圧感で、作品の質を一段階高めていました。

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ラッセルはシーランに全米トラック運転組合のトップである、ジミー・ホッファを紹介し、シーランはホッファの護衛になります。ホッファはトラック組合を牛耳っており、政治やマフィアを手玉にとるほどの権力があるんですね。

この権力を持った男を演じるのが名優アル・パチーノ。ホッファは巧みな弁術で人を操り、時にはお茶目な一面もみせる人ったらしの強欲な男ですが、こういった役柄はアル・パチーノのお手の物ですね。


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両雄揃いたち、全米トラック運転組合、マフィア、政府、それぞれの思惑が入り乱れる中、キューバ危機、ケネディ大統領暗殺、ウォーターゲート事件などを経て、物語は大きなカタストロフを迎えます。


アメリカ近現代史の総括という要素も本作の見所の1つですね。



物語が進むにつれ、ホッファとシーランは互いに尊敬し合い、2人の間には立場の垣根を越えた友情が芽生えるのですが、そういった関係性をデニーロとアル・パチーノが演じると、否が応でも大傑作『ヒート』を連想してしまいます。

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やっぱりこの2人が画面に映ると、画にとてつもない力が宿り、同時に映画史を感じずには入られません。


『ゴッドファーザー』

『スカーフェイス』

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』

『グッドフェローズ』

『カジノ』…

いずれも傑作ばかりですね。


本作はこれらギャング・マフィア映画の総括でもあり、それぞれの役者のキャリアの総括的な作品でもあります。


まさにエポックメイキングな作品。


本作はこのように記念碑的でとてもダイナミックな作品でありながら、同時に内省的でもあるんですよね。


スコセッシの映画には3つの側面がありますが、


①マフィア、ギャング映画(『グッドフェローズ』『ギャング・オブ・ニュヨーク』など)


②宗教映画(『沈黙』『最後の誘惑』など)


③映画史探求(『ヒューゴの不思議な発明』など)


本作では「罪」「贖罪」「悔恨」といったものがサブテーマになっており、①と②がくっついた、今までの彼になかったより深みのある作品になっています。

スコセッシの老境の凄みを感じましたね。


映画好きになって、ちゃんと映画を見るようになってから、スコセッシの作品は欠かさず見てきましたが、本作は間違いなく映画史に残る傑作だと思いました。


この作品がNetflixで配信されるのも感慨深いですね。まさに偉大な過去と未来の架け橋になるような作品ではないでしょうか。


興奮が止みません。

本当にこれが観れてよかった。



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