【感想】【ドント・ウォーリー】大きな流れに乗る事

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・日本公開:2019年5月3日

・監督、脚本:ガス・ヴァン・サント

・配給会社:アマゾン・スタジオ

・出演:ホアキン・フェニックス

    ジャック・ブラック

    ルーニー・マーラー  

    ジョナ・ヒル




アマプラで鑑賞。2019年に見逃していた映画の一つですね。ガス・ヴァン・サント映画にホアキン・フェニックスが主演するということで、注目しておりました。


本作は風刺漫画家ジョン・キャラハンの伝記映画。彼は事故の後遺症で胸から下が麻痺してしまい、電動車椅子での生活を余儀なくされた重度の身体障害者ですが、同時に重度のアルコール依存症でもあるんですね。



どのぐらいのアル中かというと、
10分も酒を飲まないと禁断症状で、手が震えたり、あるいは幻覚を見たりします。飲み方もやばくて、大量に飲むのはもちろん、ビールにウイスキーを混ぜて飲んだり、もう普通の度数の酒じゃ酔えないようになっているんですね。電動車椅子に乗りながらずっと酒を飲み続けます。

この映画は障害とどう向き合っていくかというより、どうやってアル中を克服するかということがメインで描かれます。

ついにキャラハンは自分を変える事を決意し、断酒会に参加します。主催者のドニーを演じるのはデブで少し抜けてる役を演じる事が多かったジョナ・ヒル。なんと本作では大分痩せているんですね。演じる役柄も心に傷を抱えるどこかミステリアスな人物で、今までに無い彼の魅力が出ていました。

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断酒会に通うようになっても、キャラハンはなかなか酒を辞めることができません。子供の頃の悲しいトラウマと現在の自分の境遇が辛すぎるあまり、自己憐憫に陥っているんですね。自分を慰め、また辛い現実を忘れるためにアルコールへの依存がやめられません。

またそんな自己を正当化するため、全てを他人のせいにし、孤立してしまいます。

苦悩するキャラハンにドニーはアドバイスを出すのですが、その中での「自分を消して、大きな流れに乗っかれば大丈夫だ。」というセリフがとても印象に残りました。



昔、三池崇史がインタビューの中、なぜそんなに沢山の作品を片っ端から手がけるのかという質問に対し「川の流れに逆らうよりも流された方が良い、その方が早く先に進めるし、結局はどの支流から行っても海に辿り着くのだから」という言葉を思い出しました。


無になって、世の流れや摂理に身を任せたほうが、先にも進めるし、本当の意味で成長できる。


これは本当にそうだと思います。



そんな大きな流れに乗っかるためには、無になる必要がありますが、そうするためには、これまでの怒り・憎しみ・悲しみといった感情と決別をしなければなりません。

そこで、過去に自分を傷つけた人を赦したり、あるいは自分が傷つけた人に謝ったりして、負の感情との決別を図ります。

過去と現実を受け入れ始めるんですね。



このあたりは本当に感動しました。

そして何よりも赦さなくてはならないのが、自分を傷つけた自分自身なんです。


そうしないと、やっぱり自分を否定してばっかりで、そう言った負の感情を絶対に断ち切る事はできないんですね。



そんな努力を重ねキャラハンはようやく自分のやるべき事に気付きます。

それは風刺漫画を描く事でした。彼には卓越したユーモアと鋭い批評性、あと個性的な画風があったんですね。どんどん作品にのめり込んでいき、彼は生きる希望を見出します。


やっぱり、大きな流れに乗らないと、自分が何者で、何をすべきなのかは分からないんですね。



またキャラハンが創作している部屋の壁に、ロートレックの肖像画があった事にも、えらく感銘を受けました。

ロートレックは19世紀末期に活躍したパリの画家ですが、彼にも小人症という障害があり、自分の見た目のコンプレックスからアルコールに溺れ、放埓な日々を送ります。彼はモンマルトルのムーランルージュ(ダンスホール)に入り浸り、娼婦、踊り子と言った人たちを題材に絵を描きました。彼の絵は、一見斬新なデザインと美しさが目を引きますが、庶民の憂いや倦怠が色濃く反映されたもので、同時に風刺的でもありました。不摂生が祟り彼は36歳という若さで没します。


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キャラハンの行っている創作は、ロートレックをとても感じさせますね。



重度の障害を持つ人物を主人公にした映画といえば『マイ・レフトフット』や『潜水服は蝶の夢を見る』が思い浮かびますが、これらの作品を観て思うのは、人間は生きている限り、どんな障害があろうとも、希望を持てば、決して自分の可能性が潰れる事はないという事ですね。自分をダメにするのはいつだって負の感情や諦め。どんな状況でもその人なりに生きる事ができる、なのでドント・ウォーリーなんですね。



本作はもともと2014年に亡くなったロビン・ウィリアムズが映画化権を持っており、事故で半身不随になってしまった友人のクリストファー・リーヴを励ますために映画化を企画していたとのこと。長年アルコールと薬物依存症だったロビン・ウィリアムズはうつ病が原因で自殺したと言われています。そんな彼の苦しみもこの映画に憑依していたように思います。



この映画を観ていて、伝説のソウルシンガー、ダニー・ハサウェイの「someday we’ll all be free」という曲を連想しました。スパイク・リーの『マルコムX』の最後の葬送のシーンで流れる曲として知っている方も多いのではないでしょうか。

とても勇気がもらえる曲なので、歌詞を読みながらぜひ聴いてみてください。

someday we’ll all be freeDonny Hathaway




Hang on to the world as it spins around
Just don’t let the spin get you down
Things are moving fast
Hold on tight and you will last
Keep your self respect, your manly pride



世界にしがみついていて、地球は回っているのだから

物事は凄い速さで動いているから

降りることはできないんだよ

しっかりつかまっていて、

自分自身を大切にすることが出来れば持ちこたえて行ける、

君のプライドがあれば



Get yourself in gear
Keep your stride
Never mind your fears
Brighter days will soon be here
Take it from me, someday we’ll all be free, yeah



調子よくやって行こう

自分の歩幅を保ってね

恐れなんて気にしないで

ほら、輝ける日々が直ぐそこで待っているよ

信じていい

いつか僕らみんな、自由になれる、そうさ!



Keep on walking tall
Hold your head up high
Lay your dreams right up to the sky
Sing your greatest song
And you’ll keep going, going on
Take it from me, someday we’ll all be free



背筋を伸ばして歩き続けよう

頭を高く上げ

君の夢を空に向けて掲げでごらん

君の素晴らしい歌を歌うんだ

そして歌い続けるだろう、続けて行くんだ

信じていいよ

いつの日か、僕らみんな自由になれる

Hey, just wait and see, some day we’ll all be free, yeah
Take it from me, someday we’ll all be free
It won’t be long, take it from me, someday we’ll all be free
Take it from me, take it from me, take it from me

ねぇ、ちょっと待って、わかるかい?

いつか僕らはみんな自由になれるだろう

そんなに時間はかからないさ

信じていいよ

いつか僕らはみんな自由になれるだろう

信じていいよ

信じていい

信じておくれ


引用:MIND YOU






















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