【感想】『日日是好日』大切なのは考えるより慣れること

 

 

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・日本公開:2018年10月13日
・制作国:日本
・監督、脚本:大森立嗣
・配給会社:東京テアトル
・出演:黒木華、樹木希林、多部未華子

 

本作は樹木希林さんが2018年9月に亡くなってから、翌月に公開された作品。前から見たいなと思っていたのですが、先延ばしにしていました。評判も物凄く良いんですよね。アマゾンプライムにあったのでこの機に鑑賞しましたが、本当に良い映画でした。

 

どういう話かというと、典子黒木華)というちょっとガサツでおっちょこちょいの大学生が、興味本位でお茶を習い出すというところから始まります。お茶の先生は樹木希林さん扮する武田のおばさん。凛とした佇まいや、美しい所作で、もう実在の茶道家にしか見えません。

お茶の稽古は毎週土曜日に行われ、初めは悪戦苦闘しイヤイヤ通っていた典子も、徐々に茶道の魅力に取り憑かれています。

このひょんな事から何かを初め、気付いたらそれにどっぷりハマっているという感覚は周防監督の「シコふんじゃった。」や「shall we ダンス?」などの一連の作品を連想しますね。筆者の大好物です。


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本作はなんと1993年から2018年までの25年に渡る長い期間が描かれているんですね。この辺りは劇中に「大切な事は時間をかけてゆっくり分かっていくもの」というセリフがあるように、典子が茶道を理解するまでが、丁寧に描かれます。

 

これだけの長い期間ですから、映画自体の尺も本来だと、3時間や5時間になってもおかしくありませんが、なんと上映時間は100分しかありません!さっくりコンパクトに良くまとまっていて非常に見やすいです。

 

この長い期間の中で、典子は大学を卒業し、出版社で働き、独り暮らしを始めますが、通常の映画なら職場シーンや、恋人が出てきたりと様々な展開があるところ、本作では出てくるのが実家と茶室と独り暮らしの部屋のシーンぐらいで、登場人物も極力排し、余計なところがうまく省略されているんですね。このあたりは非常にうまい。

 

あと、あえて語り過ぎないことで、多くを語るという余白を活かした演出が効果的に機能しており、そのおかげて映画の尺自体は短いですが、どっしりした鑑賞感があります。

 

劇中のセリフの中で「今、目の前にある事に集中しなさい」というものがありますが、その言葉どおり、典子と茶道の関係だけにフォーカスを当てた映画作りに感服しました。

 

ほとんど茶室しか出てこないと聞くと、退屈な映画に思われるかと思いますが、そんなことはなく、月日を重ねる毎に成長する典子の姿がういういしく、苦々しく、溌剌としていて飽きさせません。

 

茶道の所作や作法を身につける事により、その優美さや豊かさに気づき、どんどん五感が研ぎ澄まされるにつれ、春と秋の雨音の違いや、温度による水音の変化といった些細な事にも気づけるようになります。

 

典子は茶室という限定的な空間で、この世界の美しさをどんどん発見していくんですね。この辺りは本当に観ていて楽しく、同時に癒されました。また茶室の窓から四季折々の庭の風景を映す演出も粋だと思いました。庭の紅葉や、積雪、また6月の雨など、四季の移ろいは美しいものだと、魅入ってしまいました。

 

本作は日本の四季の美しさが所狭しと詰まっていて、とても趣のある贅沢な映画でした。とにかく美しいです。


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それと形式と意味の二項対立というテーマも面白かったです。

初めは茶道の一見無駄に思える所作や形式に、「それになんの意味があるんですか?」と疑問を呈してばかりなのですが、考えてしまうと動きが頭に入らず一向に前に進まないんですね。

先生に「考えるよりもまず手を動かす」と叱責されてしまうのですが、まさにその通りで、無意味に思える所作の一つ一つを覚える事でしか、その意味は理解できません。

 

典子は茶道を始める前は「やりたい事がわからない」という悩みを抱え、うじうじしていましたが、それは考えてばかりで行動しなかったからだめだったんですよね。形式や所作を身につける中で、その人なりのやりたい事や、やるべき事が見えてきます。

 

やりたい事は、たとえそれがやりたくない事でも、何か揺るぎない形式を身につけることによって生まれるのだと本作を見て思いました。

 

だから形から入るのは事は正解なんですよね。

 

身なりを気にしたり、正しい言葉遣いに気をつけたり、そう言ったものが人を豊かな人間にしていくんだと思います。

 

本当に良い映画でした。

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