【感想】『アルキメデスの大戦』合理的な選択のための非合理

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・日本公開:2019726

・制作国:日本

・監督、脚本:山崎貴

・配給会社:東宝

・出演:菅田将暉

    柄本祐

    浜辺美波

    笑福亭鶴瓶

    館ひろし

    橋爪功 

    國村隼




本作で監督と脚本をしているのは山崎貴。これまでの彼の作品は好きではありませんでしたが、本作の評判は非常に高く、また興味のある題材でもあったので、DVDレンタルされたこのタイミングで鑑賞いたしました。


見てみると、これがめちゃめちゃ面白い傑作でした!



まず、冒頭の巨大戦艦沈没シーンの迫力がやばいです。海上の巨大戦艦一隻の日本に対して、空から数十機の戦闘機で攻撃を仕掛けるアメリカ。戦力の差は圧倒的で、巨大戦艦からの砲撃はほとんど当たらず、蜂の巣状態で戦闘機からの爆撃を受けます。この戦闘シーンで、日本側の兵士の視点と全体の攻防を交互に見せて行くので、より緊迫感と迫力が増すように思いました。


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中でも、怯えながら砲撃をしている日本兵が攻撃なんとかかわし、隣の仲間を見ると腕しか残っていないという見せ方は本当に怖い。そしてそんな中やっと一発当てて一機落とすことができるのですが、向こうのパイロットは脱出し救出されるんですね。人命が軽んじられ玉砕覚悟の日本と、人命を第一に考えるアメリカとの違いがここで描かれていて、同時にこれが国力の差でもあるということが示されます。


また、救出されるアメリカ兵の姿をみる日本兵の目が切ないですね。彼は羨ましいのか、悔しいのか、あるいは絶望しているのか反別できません。


そして最後は戦艦の沈没。タイタニック並みのスケール感で船が見事にひっくりかえります。船から振り落とされ海に落ちる兵隊達。

この沈没で、のべ3000人の兵隊がなくなり、この冒頭だけでアメリカとの戦争が間違いであったことが理解できます。

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これは1945年の終戦の4ヶ月前に実際に起きたことですが、ここから時制が12年前に遡り、場面は1933年の海軍会議のシーンになります。


ここで議論している内容というのが、冒頭で沈没が描かれた、巨大戦艦を作るか作らないかという話し合いなんですね。議論は白熱しますが、賛成派が圧倒的多数。それに対して当時海軍少将の山本五十六がそれに反対します。それというのは、巨大戦艦ができればそれが戦意高揚の象徴となり、一気に戦争へと突き進んでしまうと考えたからなんですね。つまり「こんな戦艦があればアメリカにだって勝てる、だから戦争をしよう!」と国民に思わせることができるわけです。また山本五十六はこれからの時代は航空母艦が必要と考えていたんですね。


今にして思えば、空からの攻撃のほうが圧倒的に有利なのは火を見るよりも明らかですが、当時はわからなかったんですね。

議論は決裂し、また2週間後に決定会議が開かれることになりました。


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万事休すに思われた、山本五十六ですが、あることに気が付きます。というのも巨大戦艦の見積もり予算が、明らかに低く見積もられているんですね。

この予算の捏造を暴くことができれば、議論で優位に立つことができると考えたわけです。


しかし、材料費や人件費の内訳は機密となっており閲覧することができず、正確な見積もり予算を調べることができません。それに加えて、わずか2週間という調査時間の少なさに周りの人間はみんな匙を投げてしまいます。そこで白羽の矢がたったのが、菅田将暉扮する数学の天才、櫂直(かいただし)です。

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この櫂直ですが、相当な曲者で合理的な事以外求めようとせず、誰彼構わず自分の嫌な事は嫌とはっきり言う性分なんですね。また彼は軍人が物凄く嫌いななんですね。時に不合理だと思われても軍規や戒律を最優先にする軍人が理解できないんですね。


なので山本五十六が櫂直をスカウトにくるのですが、当然断ります。またプリンストン大学への留学が決まっていたので、自分には関係がない、こんな日本なんてどうにでもなってしまえと投げやりなんですね。


ですが渡航の日になり、船に乗りかけた櫂は船を見送る人々を見て、その人達が炎で焼け死ぬ光景を見てしまいます。彼の合理的な頭脳は彼に、アメリカと戦争した場合に起こる悲劇を彼に見せたんですね。そして彼は自分が戦争を阻止しなければならないという使命感に囚われます。


「日本がアメリカと戦争をしたら、国力で圧倒的に劣る日本は全滅してしまう。自分が巨大戦艦製造計画を阻止して、戦争を止めなければならない!」と考えたんですね。


ここの心変わりのシーンは涙が出そうなほど胸が熱くなったのですが、なんと説明によるセリフがないんですね。本当に見事だと思いました。


そんなこんなで、山本五十六らに合流し、櫂は巨大戦艦の正しい見積もり予算を出そうと奔走しますが、賛成派側からの妨害が、櫂の行く手を阻みます。

果たして櫂は見積もりの嘘を暴き、戦艦建造を阻止できるのか!?


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というのが本作のプロットなのですが、冒頭で巨大戦艦沈没のシーンがあるということは、建造を阻止できなかったということなんですよね。失敗するのがわかっているから詰まらなくなるかというと、全くそうはなりません。ヒトラー暗殺計画を描いた『ワルキューレ』は作戦が失敗に終わることを知っているので、サスペンス的な展開もイマイチ盛り上がりに欠けましたが、本作はこれとは違い、もう一つの真の巨大戦艦建造の理由という捻った仕掛けが用意されているので少しも飽きません。このツイストする展開には舌を巻きましたね。


『風立ちぬ』を連想したというと少しネタバレになりそうなので、これ以上は言いません。



唯一苦言があるとすれば、終盤の決定会議の日までに正しい見積もりを出せるかというサスペンス的な展開が少し甘いように思いました。『アルゴ』までやれとは言いませんが、もっとハラハラさせられたのではないかと思いました。ここの部分をスピルバーグが監督していたら、さらに一段上の作品になっていたのではないかと思います。なんたって『ペンタゴンペーバーズ』においては、新聞を発行できるか、できないかだけで究極のエンターテイメントを作り出せる人ですから。


ですが、本作がかなり面白い作品なのには間違いありません。

今までの山崎貴作品がこの傑作に向けた非合理な選択だったのだとしたらすべて納得が行きます。


あ、でも同時期に公開された『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はちょっとあれだったみたいですね


うーん、やはり『ペンタゴン・ペーパーズ』と『レディ・プレーヤー1』という全く違うタイプの作品を同時期に作り、どちらも傑作に仕上げたスピルバーグのようには行かないのでしょうかね。

いずれにせよ、今後もこのような作品に期待!


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