【感想】『マリッジ・ストーリー』自己実現欲求と夫婦の軋轢

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・配信:
2019126

・制作国:イギリス、アメリカ

・監督、脚本:ノア・バームバック

・配給会社:Netflix

・出演:アダム・ドライバー

    スカーレット・ヨハンソン

    ローラ・ダーン

    レイ・リオッタ

  

昨年の12月に劇場で少し公開されてから、配信されたNetflix制作の映画。「アイリッシュ・マン」といい、今後このスタイルが増えそうですね。個人的には良い事だと思います。近くの劇場でやってなかったり、なかなか観に行けない人もいるわけですから、配信がそういった不便を解消してくれますね。そして本作はアカデミー賞の作品賞にノミネートされ、さらにアダム・ドライバーが主演男優賞、スカーレット・ヨハンソンが主演女優賞、またローラ・ダーンが助演女優賞にノミネート、これだけで作品の質と演技力の高い映画になっていることが伺われます。本作は必見の作品に間違いはないですが、何となく離婚劇は見たく無かったので、鑑賞が配信から1ヶ月後になってしまいました。結論から言うと、これは絶賛されるのも納得の非常に質の高い作品でした。


この2人どんな夫婦かというと、アダム・ドライバー扮する旦那の方は舞台監督権脚本家で、スカーレット・ヨハンソン扮する妻は、旦那の舞台の主演女優です。私生活でも仕事場でも常に一緒にいる夫婦なんですね。2人の間には8歳の息子がおり、3人でのニューヨーク暮らしです。

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冒頭この夫婦が、ホームビデオ風の映像に乗せて、お互いの好きな所についてそれぞれ話すシーンから始まります。旦那が奥さんの好きな所を誰にでも親切で子供と全力で遊ぶ所だと言えば、奥さんが旦那の好きな所は自分を曲げずにやり抜く所など、それぞれの好きな所を話していきます。この冒頭のシーンはポップで楽しく、一気にこの夫婦が好きになります。

が、次のシーンでこの好きな所を1つ1つ挙げていたのは、夫婦カウンセリングの為だったということが分かります。つまり、現在の2人は不仲で、カウンセラーが憎しみ合っている2人を冷静にするために好きだった所を1つ1つ挙げさせていたわけですね。見ていて一気に奈落の底に突き落とされた感覚でしたね。


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妻は旦那の劇団から脱退して、一時的にLAでのテレビの仕事に就くことを選びます。舞台女優になる前の彼女は、ハリウッド女優として活躍しており、未だにLAにコネがあったんですね。妻の実家はLAにあるので、息子を連れて実家に帰ります。


この時点で、ニューヨークとLAとの別居になるのですが、旦那の方はまだ、関係は修復可能だと考えているんですね。でも彼女の気持ちは離婚という方向に大きく傾いており、弁護士に相談をします。この弁護士というのが、やり手の女弁護士でローラ・ダーンが演じております。

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この女弁護士と妻の会話の中で、不仲になってしまった理由が明かされるのですが、ここでのスカーレット・ヨハンソンの演技が素晴らしい。すれ違いの理由は旦那が自分の要望ばかり通し、奥さんのやりたい事はさせず、また奥さんの意見にも耳を貸さなかったので不満がたまっていたんですね。つまり根本的な原因は旦那が奥さんの自己実現欲求を認めなかったことにあります。でこの妻を演じるスカーレット・ヨハンソンにこの役のオファーが来たのは、ちょうど彼女が離婚調停中の時だったらしいんですね、なので圧倒的なリアリティがあり、あとここのシーンは約5分~7分程度のワンカット長回しなんですが、役者としての技量も存分に発揮された、圧巻の演技でした。


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ここから話は息子の親権を巡るドロドロの裁判劇になっていき、そして終盤の夫婦での一対一での口論のシーンになりますが、ここは本当に凄かったです。ここもワンカットなのですが、なんと50テイク以上取り直したとか。やばいぐらいの迫力と真実の感情がそこにありました。

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というのもこの話はノア・バームバック監督の離婚の経験がベースになっているんですね。実際にこんな感じで喧嘩をしたのかはわかりませんが、元妻のジェニファー・ジェイソン・リーも女優なので、本作の夫妻同様の軋轢があった事はうかがわれます。なのでこの説得力とリアリティ。またノア・バームバック監督は過去作で、自分の両親の離婚をベースに「イカとクジラ」という作品を作っているので、よっぽど離婚に縁のある人生なんだなと思わされます。転んでもただでは起きないところが凄いですね。


本作はノア・バームバック監督の個人的な作品かと思いきや、弁護士、裁判官、離婚調停委員など様々な人物にインタビューした上で作り上げたストーリーなので、裁判の過程がリアルに描かれた重厚感のある作品になっています。裁判劇としても楽しめますし、女性が社会に於いて何を要求され、どんなプレッシャーを受けているかといったフェミニズム的な視点も入っています。これを体現するのが女弁護士役のローラ・ダーンなのですが、助演女優賞にノミネートされるのも納得の演技でした。本作は女性の男性からの自立を描いた作品とも言えますね。

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やはり、もっとも考えさせられたのは友好な夫婦関係についてです。個人的にも自分の意見を押し通してしまう部分があるので、そこは反省しようと思います。奥さんにだって自己実現欲求というものがちゃんとそこにあるのだから、それを尊重していこうと思いますね。


本作は結婚前のカップルやまだ彼女すらいない人にも、友好な関係を学ぶ上で非常に刺さる部分のある作品ではないでしょうか。非常におすすめです。


また本作は個人的に、『レボリューショナリー・ロード』『ブルー・バレンタイン』『ラビット・ホール』などに連なる夫婦残酷映画に加えられました。これらの映画を一気見したら夫婦関係を学ぶ良い勉強になりそうですが、残酷過ぎて精神は崩壊しそう。


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