【あらすじ・感想】『青春デンデケデケデケ』雷に打たれたような衝撃

公開日:1992年10月31日

目次

<スタッフ>

監督:大林宣彦
脚本:石森史郎
原作:芦原すなお

<出演者>

藤原竹良: 林泰文
合田富士男: 大森嘉之
白井清一: 浅野忠信
岡下巧:永堀剛敏
谷口静夫:佐藤真一郎
藤原孝行:ベンガル
藤原絹江:根岸季衣
藤原杉基:尾美としのり

 

<あらすじ・感想>

 みなさんいかがお過ごしですか?

僕はここ最近、先日4月10日に亡くなられた大林宣彦作品ばかり見ています。
やっぱり大林作品はどれも実験性に富んでいて、他に類似するものがないという印象を持ちました。
そんな大林作品の中でも本作はバンドに夢中になる高校生の青春を描いた作品で、
ダントツで見やすいウェルメイドな作品だと思いました。

では本作のあらすじや見どころなどを感想を交えて語っていきます!


【タイトルの意味は?】

 まず、タイトルになっている「デンデケデケデケ」とは何かと言うと、エレキギターのサウンドのことです。主人公の藤原青年はラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」という曲のギターの演奏を聴いて、雷に打たれたような衝撃を受けます。

通常、エレキのサウンドは当時『テンテケテケテケ』と表現するのが一般的でしたが、原作者の芦原すなおさんは、その雷に打たれたような衝撃を表現するために「デンデケデケデケ」にしました。

それまでは音楽は嗜みとしてクラシックを聴き、バイオリンを弾いていた高校一年生の藤原青年でしたが、この瞬間からエレキギターをかき鳴らしたいという衝動にかられ、ギターにどっぷりはまって行きます。

が、そう簡単に高価なエレキギターが手に入るわけではなく、自前で製作したアコースティック・ギターで我慢する日々が続きます。舞台となる1965年の一般家庭にはまだエレキギターは普及しておらず、ギターに憧れた子供達がまず手にするのはガット・ギターというのが相場でした。

【若き日の浅野忠信は?】

 藤原青年は少しでも好きな音楽に近づくため軽音部に遊びに行くのですが、そこで出会うのが白井という細身で整った顔の青年で、彼を演じているのが若き日の浅野忠信。子供の頃はこんなに可愛い顔をしていたんですね。

白井はエレキギターは持っていませんでしたが、アコギで練習を積んでおり、ギターの腕前はなかなかのもの。同じくエレキサウンドを志向していた二人は意気投合しバンド結成を誓います。

そうと決まれば、次はメンバー集め。ベースは寺の息子の合田が担当し、ドラムはブラスバンド部で大太鼓を担当していた岡下に決まりましたが、彼らには肝心の楽器がありません。

どうやって楽器を調達するかと言うと、みんな夏休みを利用してバイトをするんですね。
彼らは汗水垂らしてやっとのこと楽器を手にします。

ここまでが丹念に描かれている分、初めてバンドで音を合わせた時の彼らの嬉しそうな表情がとても良いです。
バンド名は『ロッキング・ホースメン』と決まり、当然スタジオなんて便利なものはありませんから、家で練習をしたり、屋外で練習をしたり彼らはバンドに熱中します。合宿をしたり、知り合いの店で演奏をさせてもらったり、青春真っ盛りの彼らにとても魅入ってしまいます


 

【本作のロケ地と方言は?】

 原作は芦原すなおさんの実体験が基となっており、原作通り芦原さんの過ごした香川県の観音寺市でロケが行われました。方言も観音寺弁が使われており、耳慣れない言葉は逆に、画面の中の人々により実在感をもたらしています。

映画化の企画が持ち上がった当初は、舞台を観音寺市から湘南へ変更し標準語で作られる予定だったとのことですが、大林監督がこれを却下したとのこと。DVDの特典によるとインタビューで大林監督は「映画というのは作者の思いを映画化するもの」と言っていますが、さすが巨大な作家性を持つ大林監督らしい配慮です。

また芦原すなおさんは個人的な思い入れの強い本作を大林監督になら安心して任せられると思ったそうです。
(「舞台を尾道に変えられるのでは?」と少し心配したそうですが。)

【本作が描く期間は?】

この手の音楽映画の場合、例えば学園祭までの半年間だったり、数ヶ月間と行った短い期間を描くことが多いと思いますが、本作はなんと3年間が描かれます

目を掛けてくれる先生に、第二軽音楽部として正式な部に認めてもらい、音楽室を練習場に使わせてもらったり、メンバーの一人が恋愛をし、また不器用なデートをしたり、これぞ青春映画という感じでしたね。

でも、こんな全編に渡って楽しい映画も、やはりどこか切なさが漂うんですね。高校3年生になるとそれぞれが進路を考え出します。こちらも「ずっとこの映画を観ていたい」と思うような多幸感を味わって観ているので、終わりが近づくにつれ胸が締め付けられます

そして最高潮の盛り上がりを見せるのが、学園祭のライブのシーン。このシーンでは友達や両親、バイト先の人々など今まで関わった人たちがみんな集まり、全員の前で3年間バンドにかけてきた熱い思いをぶつけます。
観客に「今までありがとうございました」と感謝を伝えるシーンは本当に胸が熱くなりました。

【本作の悪役は?】

考えてみたら、本作では悪役というかひねくれた人が一人も出てきませんね。みんな謙虚にたくましく生きており、足を引っ張ったり、悪さをするような人は出てきません。

よって物語の起伏に欠けるかというとそうではないんですね。
この映画で唯一悪役が出てくるとすれば、彼らを離れ離れにしようとする「時間」でしょうか。

メンバーのほとんどはお寺だったり、魚屋だったり家業を継ぐことを決意し、モラトリアムと決別します。これは青春を全てかけたからできた決断だったのでしょうね。

こちらは大人になった彼らを親のような気持ちで観ていました。
また本作を見てとても熱い気持ちになれたのも事実。

【青春は10代で終わり?】

本作は芦原すなおさんの実体験が基になっていると先に述べましたが、実際はバンドの照明係をしておりバンドのメンバーではなかったとのこと。叶わなかった夢を実現させるためにこの作品を書いたとのことです。

こう言った個人的な想いの強い作品って、より共感生と普遍性を持つと思います。先日のアカデミー賞でスコセッシからポン・ジュノに送られた「最も個人的なことこそ最もクリエイティブなこと」という言葉を思い出しますね。

ちなみに芦原すなおさんは現在もギタープレーヤーとして作家業の傍ら演奏活動を続けているとのこと。
青春は10代を過ぎたら終わるというわけではなく、熱量を持ち続ければ永遠に続くのですね。

大林監督は晩年自分のことを「70歳の新人監督」と言っていましたが、芦原すなおさんと共鳴する部分が多かったのではないでしょうか。

僕もこの熱を持ち続けられるよう、この先も本作を何度も見返したいと思います。

『ロッキング・ホースメン』本当にありがとう!

画像出典:Amazon
画像出典:Yahoo!映画
画像出典:eiga.com

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