【あらすじ・感想】『疑惑』気性の荒いフーテンvs極道の妻


公開:1982年9月18日
第6回 日本アカデミー賞作品賞受賞作

 

目次

<スタッフ>

監督:野村芳太郎
脚本:野村芳太郎、古田求
原作:松本清張

 

<キャスト>

白河(鬼塚)球磨子- 桃井かおり
佐原律子 – 岩下志麻
秋谷茂 – 柄本明
豊崎勝雄 – 鹿賀丈史
白河福太郎- 仲谷昇

 

<あらすじ・感想>(ネタバレなし)

 自粛生活が続きますが、みなさんいかがお過dごしですか?
僕は家で本や映画を見る日々です(平時となんら変わらないw)。

最近、松本清張にハマっていまして。
それで映画化作品も見てみようということで、Amazonプライムで本作を見ました。

本作は保険金殺人を巡る裁判ミステリー
個人的にミステリーの要素よりも、桃井かおりと岩下志麻の演技に痺れました。

では本作のあらすじや見どころなどを感想を交えて語っていきます。


【毒づきまくる桃井かおり】

 冒頭、歩道で桃井かおり演じる女が初老の男に自分の靴に入ったゴミを取らせているシーンから始まります。炎天下のなか、靴磨きのように跪き、女の靴を脱がせ靴の中や足裏を検分する姿を見るだけで、この男が女の尻に敷かれているのだということがわかります。

低い気だるい声で
「まだぁー?」
と言う桃井かおりの表情が、まぁ憎たらしいこと。

 本作のオファーが桃井かおりに来た時、役柄同様彼女自身、週刊誌などに嫌われていた存在だったため、周囲からこの役での出演を反対されていましたが、どうせやるならとことんやってやろうと開き直り、出演を決めたとのことです。


 それから二人はドライブをし場面は夜になり、なんと二人が乗っている車は富山新港に飛び込みます。周囲にいた人々は必死に救助活動をしますが、助かったのは女の方だけで、男の方は車とともに海に沈んで行ってしまいます。

後日、車が引き上げられると、中には男の死体がありました。実はこの二人は年の離れた夫婦だったんですね。

男は白河福太郎と言い、富山で有名な白河酒造の社長で、資産家でもあります。
女は球磨子(くまこ)とと言い、元ホステスで、結婚を機に東京から富山へ移りました。二人の出会いは彼女の働いていた東京のクラブだったんですね。

【本作は実話?】

 この事件で旦那が死んでしまうわけですが、球磨子はなんと福太郎の3億円にも上る保険金の受取人になっていました。当然、警察や各種メディアは“保険金目当ての殺人だったのではないか?”という疑惑を持つことになるんですね。

それに加え、彼女には恐喝・傷害などの前科が四犯もあったので、より世間は球磨子を“保険金目当てで夫を殺した、極悪非道な女”という風に見るようになります。

 ちなみに本作は1974年11月に大分県別府市で起きた「別府3億円保険金殺人事件」という実際の事件が題材となっています。この事件は親子4人の乗った乗用車が海に転落し、唯一生き残った父が3億円の保険金詐取目的の殺人犯として逮捕・起訴された事件。父親は、逮捕前から数々の疑惑が新聞や週刊誌で報道される中、ワイドショーに出演し潔白を主張して世間を賑わせたました。悪質な保険金殺人事件が増加するきっかけとなった事件と言われています。

こんな事件が実際にあったなんて知らなかったので調べて驚きました。

 

【岩下志麻の演技は?】

 ここから本作は裁判劇になるのですが、誰も球磨子の弁護を引き受けようとはしません。引き受けたら世間からバッシングを受け、勝訴してもなんのメリットもないからですね。

仕方がなく、国選弁護士を探すことになるのですが、そこで白羽の矢が立ったのが岩下志麻演じる佐原律子。律子は球磨子の弁護を引き受けるのですが、この二人が水と油というか、罵り合いと睨み合いの連続で終始バチバチなんですね。“気性の荒いフーテンvs極道の妻”ですからバチバチにならないはずがありません。

 ちなみに本作で桃井かおりは果敢にアドリブを仕掛けていたそうで、岩下志麻さん曰く「あんたの顔嫌い」はアドリブだったとのこと。この桃井かおりのアドリブに対する岩下志麻の受けの演技が見事です。

桃井かおりに立ち向かえるのは岩下志麻ぐらいなんじゃないでしょうか?
あっ!でも、かたせ梨乃さんでも良いかなと思いますが、それだと殴り合いの喧嘩になりそう。
(参照記事:https://kakaku.com/tv/channel=6/programID=26473/page=244/)

 

【ただの裁判劇ではない?】

 裁判が始まり、証人の発言により球磨子は不利な状況にはなりますが、確たる状況証拠や物的証拠がないため、すんなりと有罪にはなりません。

そして見ているとなんとなく“球磨子はやっていない”ということがわかりますが、こう言った冤罪を晴らすような裁判劇だと、被告が不利になるにつれヒヤヒヤさせられるという展開になりますが、(最近だと『リチャード・ジュエル』)本作ではそうはならない。なぜなら気性が荒く、態度は大きく、エゴの塊のような彼女に一切感情移入ができないからです。

また弁護士とバディ化して行くという展開もこう言った裁判劇ではよくありますが、本作ではそうはなりません。でも、この映画がそれでも面白いのは事件の真相に惹きつけられてしまうからですね。

なにより本作は裁判劇でミステリーではありますが、女性の生き方を描いた映画であるという部分に核があると感じました。これは松本清張作品の一貫したテーマでもありますね。

球磨子は「男から搾り取って生きる」女で、律子は「手に職をつけて男に頼らないで生きる」女この生き方の違う二人の女が交錯するところに本作の最大の面白さがあります。

 

【ワインを掛け合うラストシーン】

そして最後にクラブでこの二人が対峙するシーンは鳥肌ものでした。

ワインを掛け合いながら
「わたし、あんたみたいな女嫌いよ」」
と舌戦を繰り広げる二人ですが、最後にはライバルを見るような眼差しで別れていきます。この最後に残された余韻に痺れました。

 

本当に面白かったですね。
松本清張×野村芳太郎作品はまだ他にもいくつかあるので、全部見ようと思います。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

本作は
Amazonプライム
U-NEXT
Netflix
Hulu
FOD
で配信中なのでよかったら見てみてください!
※2020/05/03時点

画像出典:Amazon
画像出典:Netflix
画像出典:ミドルエッジ
画像出典:松竹シネマクラシックス

 

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