【あらすじ・感想・評価】『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』偽らない事の大切さ

5月1日:Netflix配信

目次

<スタッフ>

監督・脚本:アリス・ウー

<キャスト>

エリー・チュウ:リーア・ルイス 
ポール:ダニエル・ディーマー
アスター:アレクシス・レミール 

<あらすじ・感想・評価>

みなさんいかがお過ごしですか?
今回は5月12日(火)にTBSラジオ「たまむすび」の中で町山智浩さんが紹介していた『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』というNetflix配信の映画について語っていきたいと思います。

町山さんの話を聞いて早速見てみたのですが、これが物凄く良い作品でした!
話はひょんなことからラブレターの代筆をする事になった少女の葛藤と成長を描いた作品なのですが、ラブコメとして一級品であり、成長譚としてもLGBTQ映画としても深く考えさせられる内容でした。

個人的に、“自分が自分らしくあるという事とは?”という問いに共感しました。

町山さんの紹介では
・カズオ・イシグロの小説『日の名残り
・ヴィム・ヴェンダースの映画『ベルリン・天使の詩
・サルトルの戯曲『出口なし
・エドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック
などの説明があり、それらを知っていなければ難しいのかなと少し思いましたが、見てみると全然そんな事なく、知識がなくても誰でも楽しめる門戸の広い作品でしたね。

でも上記を押さえとくともっと深く楽しめると思うので、時間が無くて押さえられないという方は、町山さんの解説を聞いてから見るのも良いかもしれませんね。
(僕も恥ずかしながら押さえていません。すみません。)

それでは町山さんの紹介には遠く及びませんが、あらすじや見どころなどを感想を交え語っていきますので、よかったら最後までお付き合いください!

 

【本作の主人公は?】

本作の主人公はエリー・チュウという高校3年生の中国系移民の女の子
演じるのはアメリカの人気ドラマ『Nancy Drew』などに出演し、今人気急上昇中の俳優リーア・ルイス。個人的に10代の時の新垣里沙(モーニング娘。)に似ているなと思いました。

(ちなみに中国系移民を演じたエリー・チュウですが生後間もなくアメリカに養子として渡り、白人家庭で育てられたため、中国語が話せないとのこと。本作のために中国語を練習したとのことです。)



エリーはアメリカのスクアミッシュという
人口4,000人程の田舎町に父親と二人で暮らしており、地元の高校に通う彼女は浮いた存在なんですね。というのもこの街に中国系移民はほとんどおらず、周りの人々は彼女に対して差別的だからです。それに加えて彼女は秀才で、またアートへの造詣が深く、同年代が話すような話題には興味がないので友達もできません。彼女が同年代の子たちと接点を持つのはレポートの代行のバイトをする時のみ。レポート1回代行すると、依頼者から20ドル貰えるんですね。彼女はスクールカーストでいうところのブレインです。

 

【エリーの片思いの相手は?】

 そんな孤独な生活を送るエリーですが、片思いの相手がいるんですね。その相手というのが同じクラスのアスターという女の子。エリーは同性愛者なんですね。アスターはスクールカーストのトップにいるので話しかけることもできず、遠くから見つめるだけの日々です。個人的にこのアスターは少女の時のリブ・タイラーに似ているなと思いました。

 

【ラブレター代筆】

 ある日、ポールというラグビー部のスポーツ青年から、ラブレター代筆の依頼を受けます。
ポールは純粋な好青年なんですが、文才がありません。彼がラブレターを送りたい相手というのがアスターなんですね。動揺したエリーはもちろん代筆を断るのですが、ポールの強い押しと、50ドルという高い報酬に渋々引き受ける事にします。

勉強はできますが、ラブレターなんか書いたこともない彼女は、ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』という映画の中のセリフを引用してラブレターを書く事にします。というのも映画好きの父親がたまたま見ていたんですね。この父親は博士号も持っているほどの秀才なのですが、地元の人たちとうまくコミュニケーションが取れず、仕事がうまくいかないので、毎日家に籠って映画ばかり見ているんですね。

ちなみに僕は『ベルリン・天使の詩』のDVDを持っているのですが、3回トライするも毎回序盤で寝てしまい、最後まで観れていません。この機にリベンジしたいです。

 

【ラブレターの返事は?】

手探りで書いたラブレターですが、なんとアスターからの返事が来ます。
開封して見るとそこには「ヴィム・ベンダースは好き、だけど盗用はしない」と書いてあります。アスターもエリーと同じくアートがとても好きで、映画や文学にとても詳しかったんですね。

エリーはアスターが同じ趣味を持っていたことを嬉しく思い、またアスターも周りにこういった話ができる子がいなかったので、胸をときめかせます。手紙のやり取りが続き、2人の心は近づいていきますが、肝心のポールはというと会話の内容が全く理解できず、蚊帳の外の状態なんですね。確実に好きな子に近づいてはいるけれど、それは自分ではないわけですからなんだか虚しいですよね。

でもここでめげないのがポール。彼は愛するアスターのために彼女の好きな本や映画を見たり、必死に勉強するんですね。とうとうデートの日が決まり、その日に向けボロがでないよう、エリーと特訓を重ねます。会話の練習をしたり、二人でアスターを観察したり、ここのシーンは本当に面白かったですね。

 

【恋の行方は?】

 とうとうデートの日になり、エリーが遠くから見守るなか、ポールとアスターは対面するのですが、アスターからしたら手紙の中のウィットなポールと実際のポールは全然違うんですね。ここのぎこちなさは本当におかしかった。こちらまで気まずくなりましたね。

どうにかその夜を乗り切ったポールはアスターにどうにか好感を持たれます。手紙では饒舌だけれど、実際に会ってみると口下手というところが、どこか母性本能をくすぐったのでしょうね。

次回また会う約束をしたポールですが、どこか浮かない感じなんですね。実は彼はエリーに惹かれ始めていたんですね。

ここから本作は複雑な3角関係になっていきます。果たして恋の行方は…

 

<まとめ>

というのが本作の大まかなあらすじで、エリーとポールを応援しながら見ていましたが、個人的にアスターにとても感情移入しました。彼女は周りから美人ともてはやされ、スクールカーストにおいては周りが求める所謂クイーンをしっかり演じ、常に周りの期待に応えようとしますが、本当の自分との乖離にどんどん辛くなってくるんですよね。本当は田舎町を出て色々なものに触れたいはずなのに、周りの期待に応えるため地元に残ろうとします。見ていて本当に辛かったです。自分も人口2,000人の田舎で育った人間なので、この田舎の閉塞感というのは痛いほどわかります。

この歳になってみてわかることですが、やっぱりこの閉塞感というのは、自分で自分の可能性に蓋をしてしまうから起こることなんですよね。つまり自分の限界を自分で決めてしまい、チャレンジをしなくなるから、日常に飽き飽きして、どんどんしんどくなってくるんですよね。
この部分は『レディ・バード』と似たテーマですね。

 

【本作のメッセージは?】

やっぱり大切なのは”自分を偽らない”ということでしょう。
それは人生に対しても恋愛に対しても、全てに対して言えることで、本作のメッセージはそこにあると思います。だから青春ラブコメというジャンルに括られそうな本作は、どんな年代の人が見ても響くんですよね。

【題名の意味は?】

あと、本作は“愛とはなにか?”というテーマにしっかりと向き合っており、その部分にも共感しました。本作のタイトルになっている「ハーフ・オブ・イット」とは、プラトンの『饗宴』の中に出てくる言葉で、プラトンは元々人間は一対の男女からできており、我々は引き離された片割れを探していると語っていますが、それは裏を返せば、取っ替え引っ替え相手を変えることであって、本当の愛ではありません。本作が定義する愛は何かというと…それは本作を見て感じ取ってください。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
やっぱりNetflix作品はクオリティが高いですね。

また本作はアリス・ウー監督の2作目で、『素顔の私を見つめて…』以来、16年ぶりの作品なんですね。今後もアリス・ウー作品に注目です。

Netflixで最近配信された
「タイラー・レイク 命の奪還」や
「狩りの時間」についても紹介していますのでよろしければこちらの記事もどうぞ!

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画像出典:IMDb
画像出典:Netflix

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