【あらすじ・感想・評価】『ベルリン・天使の詩』究極の生命賛歌!


日本公開:1988年4月23日
1987年カンヌ国際映画祭:監督賞受賞

<スタッフ>

監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、ペーター・ハントケ
音楽:ユルゲン・クニーパー
撮影:アンリ・アルカン

<キャスト>

天使ダミエル :ブルーノ・ガンツ
マリオン:ソルヴェーグ・ドマルタン
天使カシエル :オットー・ザンダー
ピーター・フォーク:ピーター・フォーク 

<はじめに>

みなさんいかがお過ごしですか?

先日Netflix配信映画『ハーフ・オブ・イット』を紹介しましたが、その中でいくつかの引用作品があることに触れましたが、その中の一本が今回紹介する「ベルリン天使の詩」。

>>『ハーフ・オブ・イット』のあらすじ・感想はこちら

はい、言わずと知れたヴィム・ヴェンダースの名作ですよ。
でも恥ずかしながら、僕は最後まで見通すことができていませんでした。
DVDは持っているのですが、何回トライしても前半で眠ってしまっていたんですね。

それで今回、もう「この機を逃してはいけない」と意を決して最後まで見通しました。
するとこれがとてつもない大傑作だったんですね!

話は、ベルリンの人々を見守り続ける天使が、ある女性に恋をしてしまうというものなんですが、ただのラブストリーにとどまらず、生命を肯定するような、見ていて生きることがとても素晴らしく思える作品でした。

それでは本作のあらすじと見どころを感想を交えて語って行きます!

 

<あらすじ・感想・評価>

【天使ダミエル】

本作の主人公はダミエルという天使。天使と言っても見た目はロングコートを着た優しそうなオジさんで、彼はベルリンに暮らす人々を優しく見守っています

演じるのは2019年2月に亡くなってしまったブルーノ・ガンツ。「ヒトラー 〜最後の12日間」の中ではヒトラーを見事に演じ、天使から悪魔まで演じることができる、非常に表現の幅が広い役者さんですね。

そんな天使ダミエルには人間の心の声が聞こえるんですね。歩道やアパルトマン、図書館など様々な場所に移動しては

「来月の支払いどうしよう」
「孫はロックしか聞かん、甘やかし過ぎた」
「あの人に想いを打ち明けようか」

という人々の心の声が耳に入ってきます。

【どこか物悲しいモノクロの画面】

天使ダミエルはそんな人間の営みを微笑ましく見守りますが、どこか浮かない表情を見せます。彼は人間が羨ましくもあるんですね。人間を見ていると、風を感じたり重力の重さを感じることのできない自分の存在が虚しく思えてしまいます。
本作のモノクロの画面がそんな彼の寂しい心情を物語っているようです。

前半はこの天使ダミエルの視点から人間の営みを見守り続けるシーンが永遠と続くのですが、正直ここのシーンは退屈で見るのが辛い。白黒の画面で話がどこに行くかもわからず、ただ淡々と人々を観察させられるだけなので、睡魔に襲われます。僕が過去に何度かトライして挫折した理由はここにあります。

でも見通すとわかるんですが、このシーンで観客が感じる退屈は、天使ダミエルが感じているものとイコールで、ここは終盤のある展開への布石として絶対に必要なシーンなんですね。

【脚本なしで始まった撮影】

ちなみに「話がどこに行くかわからない」と言えば、本作は脚本や企画が決まらない状態で撮影に入ったそうなので、前半で話がどこに行くかわからなかったのは作り手側も同じだったのでしょう。そんな状態でこの話をちゃんと回収してしまうのだから本当に見事です。

何度も言いますがこの前半は絶対に重要。だからここで諦めないでほしい!(自戒の意味も込めて)

 

【ピーター・フォーク登場】

次に天使ダミエルが行くのは飛行機の中。そこで彼は「俺、ちゃんと演じることができるかな」という声を耳にします。それを思っていたのは、刑事コロンボ役でお馴染みのピーター・フォーク。なんと本作でピーター・フォークは本人役で出演しております。本人役で出るものだから、映画の世界と見ているこちら側の世界が地続きであると言う感覚が増すんですね。街で彼を見た人々が「あっ、コロンボだ!」と反応したりするのもリアリティがあります。

ちなみにピーター・フォークは脚本がない段階でオファーされたそうですが、普通の役者なら迷うところ、彼は出演を快諾したとのこと。その理由について彼は「カサヴェテスがいつもそうだから」と言っており、これは映画ファンなら痺れる発言ですね。このカサヴェテスとはインディペンデント映画界の父と言われるジョン・カサヴェテス監督のことで、ピーター・フォークは何作も彼の作品に出ています。特に「壊れゆく女」の演技は絶品ですね。

【恋に落ちた天使】

次に天使ダミエルはサーカス小屋へ行き、そこで彼は空中ブランコ乗りの練習をするマリオンという女性を見ます。そのしなやかな体と美貌に彼は思わず見惚れてしまいますが、彼女の表情に憂鬱を感じ取ります。なぜ彼女は憂鬱を感じているかというと、サーカスの集客が思うようにいかず、明日を限りにショーが打ち切りになってしまうからなんですね。そうなると彼女は大好きな空中ブランコ乗りの仕事ができず、ウエートレスの仕事に逆戻りです。天使ダミエルはそんな彼女の抱える寄る辺なさに、自分の想いを重ね、彼女から目が離せなくなります。そう、気付けば彼は彼女に恋をしてしまっていました。

この部分は見ていて非常にもどかしいですね。そして彼女にときめいた瞬間、一瞬だけ画面がカラーになる演出には驚きました。

そして天使ダミエルは“人間になって彼女と話してみたい”と強く思うようになります。

【天使カシエルの絶望】

天使ダミエルにはカシエルという天使の友達がおり、人間になることを相談しようとしますが、このカシエルと言う天使は病んでいてそれどころではありません。もう鬱に近い状態です。というのも、生命の誕生から人間の進化、そして諍いや戦争など、人間のあらゆる残虐さや愚かさを見てきて、彼は人間に半ば絶望しているんですね。

また、この映画が撮影された当時のベルリンは、ベルリンの壁崩壊前の東西冷戦下であり、まだ生々しい戦争の爪痕や、人々の迷いや苦悩が克明にこの映画に記録されているため、天使カシエルの絶望が映像からも伝わってきます。

 

【人間になる決意】

天使ダミエルはやはり、人間になることを諦めようとしますが、ピーター・フォークにあることを言われます。(ピーター・フォークは天使の存在がわかるんですね。)
「こんな寒い日に飲むコーヒーは美味いし、両手を擦り合わせるととても温かい。人間はいいもんだよ」と。この言葉を聞いて、天使ダミエルは人間になる決意をします。

 

【人間になった天使】

人間の世界に降りた瞬間、今までモノクロだった画面は色とりどりの色を発します。それまではモノクロで暗澹と見えていた建物も、ライブハウスの照明や道に咲く花も、全てが色鮮やかで美しい。今まで自分はこんなことにも気づかなかったのかと天使ダミエルはハッとさせられます。
また頬に当たる風の心地よさや、寒さの中で飲むコーヒーの温かみ、そして困っている時に手を貸してくれる人間の優しさに、天使ダミエルのそれまで鬱々としていた表情が一気に花開いたようにほぐれます。

「人間の営みはなんて美しいのだろう」

もうこのシーンは涙が出るぐらい美しかった。
ここから天使ダミエルは空中ブランコ乗りのマリオンを探しに行きます。

 

【本作のメッセージとは?】

天使ダミエルの視線を通して、こちらまで世界や人間が美しく思えてくるんですよね。
人間は時に残酷で救いのない生き物だけれども、それでも生きることは美しいし、また喜びであると心の底から思えてきます。

これは究極の生命賛歌ですよ。

こんなに見ていて、生きることの素晴らしさに気づかされる映画もありません。
よく“人間など生きる意味はあるのか?”と厭世的になる人はいますが、そう言う人にこう言ってあげたい
「生きる意味はないかもしれないが、生命そのものが美しいのだから、それは生きるに値すると」。本作のメッセージはまさにこれではないでしょうか。

だから本作は映画史に残る傑作であり、今だに数々の作品の原典になっているのでしょう。
僕にとっても心が弱くなったり、生きる目的を見失った時に見返したい作品になりました。

そう言えば、僕は本作のDVDを、20台前半の頃によく通っていたワインバーの店長から譲り受けました。店長とは映画の話は良くしていましたが、なぜ自分に譲ってくれたのかは当時わかりませんでした。でも今ならわかる気がします。当時の僕はカシエルとまでは行きませんが、どこか厭世的ではたから見ても生きる活力に乏しい若者だったので、そんな僕を鼓舞するため、店長は本作のDVDを僕にプレゼントしてくれたのだと思います。

今はそのワインバーは無くなってしまいましたが、店長元気にしてるかな。
この作品一生大事にします。

 

画像出典:IMDb

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