【あらすじ・感想・評価】『メランコリック』本作の斬新さとは?

 公開日:2019年8月3日

<スタッフ>

監督・脚本:田中 征爾(たなか・せいじ)

<キャスト>

和彦:皆川 暢二(みながわ・ようじ)
松本: 磯崎 義知(いそざき・よしとも)
副島さん:吉田芽吹(よしだ・めぶき)
小寺:浜谷康幸(はまや・やすゆき)
田中:矢田政伸(やだ・まさのぶ)
東:羽田真(はだ・まこと)

<はじめに>

みなさんいかがお過ごしですか?

僕は相変わらず家で映画三昧の日々が続いていますが、昨年ミニシアターでかかって話題になった日本映画「メランコリック」をレンタルで観てみました。

本作はサスペンスでもあり、コメディでもあり青春映画でもあり、観る終わった後で「こんな映画観たことない!」という新鮮な喜びを持ちました。

それでは本作のあらすじや見どころを感想を交えて語って行きます!

<あらすじ・感想・評価>

【高学歴の内気な青年】

本作の主人公は和彦というメガネをかけた内気っぽい青年。年齢は30歳でなんと東大を出ているインテリなんですが、未だに実家暮らしで、バイト生活を送っております。彼は自分に自信がなく一度も就職をしたことがないんですね。特に夢があるというわけではなく、なんとなく無為に過ごす日々。そんな和彦を母と父は優しく見守ります。

 

【銭湯での再会】

そんなある夜、和彦がまだお風呂に入っていないのに気付かず、母親がお風呂の栓を抜いてしまいます。仕方なく和彦は近所の銭湯に行くことになります。

湯船から上がり飲み物を飲んでいると「あれ、和彦くん?」という声が。
振り向くと、高校の同級生の副島さんでした。ショートカットの可愛らしい女性ですね。
なんとなく照れもあり、ぎこちなく話す二人ですが、この副島さんはどうも和彦に好意を持っている様子。和彦もまんざらでもなく、副島さんがここの銭湯によく通っているということを聞き和彦は嬉しそうです。
ちょうどここの銭湯がアルバイトを募集しており、現状、無職の和彦はアルバイトの応募をすることにします。この銭湯で働けば副島さんに頻繁に会えるかもしれません。

 

【銭湯で働くことになった和彦】

面接の日、オーナーから「きみ、東大出てるんだね!」と驚かれます。オーナーに気に入られた和彦は採用されることになります。またこの日、同じく面接に来ていた松本も採用されました。松本は和彦より年下で、見た目は金髪でチャラチャラしていますが、感じの良い青年です。

 

銭湯でのアルバイトの初日、和彦はあと数日で辞めることになる小寺というアルバイトと会います。小寺は無愛想でどこか恐ろしい雰囲気を持っています。

 

【深夜なのに明かりがついたままの銭湯】

和彦はある程度仕事も覚え、受付に座っていると、同級生の副島さんがやってきます。嬉しそうな副島さんは「今日、終わったら飲みに行かない?」と和彦を誘い、仕事が終わってから二人は居酒屋に行きます。楽しい時間を過ごし、店を出て和彦は副島さんを家まで送ることに。道すがら銭湯の前を通ると、深夜1時を過ぎているにも関わらず、銭湯の明かりがついたままでした。

 

【銭湯の秘密】

翌日、和彦はいつも通り銭湯で働き、営業終了後帰ろうとすると、本日非番だったはずの小寺の乗った車が銭湯に入って来るのを見かけます。気になった和彦は、裏口から入浴場を覗くと、そこにはオーナーと小寺、そして血だらけの死体が転がっていました。

何が起こっているのかわからず、ただ傍観することしかできない和彦。
すると覗いていることを気付かれ、和彦は小寺に取り押さえられてしまいます。

死を覚悟する和彦ですが、オーナーにこう言われます。
「あ、見ちゃった。仕方がないね、見た以上、これからは君にも夜の業務をして貰うよ」と。

 

実はこの銭湯では、田中というヤクザからの殺しの依頼を受け、夜な夜な殺人が行われていたんですね。オーナーはこの田中というヤクザに多額の借金をしており、引き受けざるを得ません。銭湯は焼却もできて掃除も簡単なものですから、いいように田中に利用されます。そして小寺は腕の立つ殺し屋だったんですね。

 

【巻き込まれて行く和彦】

和彦は死体の掃除を任され、淡々とこなします。その報酬として、和彦は数万円をもらうのでした。
ここから和彦の死体清掃の日々が始まります。

普通なら嫌なはずだし、地獄に引きずり込まれ、混乱するはずなのですが、報酬をもらった和彦はなんだか嬉しそうなんですね。おそらく、今までこんなにまとまった大金を稼いだことがなかったということと、また同時にこんなに人に必要とされたことがなかったから嬉しかったのでしょう。

ここの部分は凄く歪んで見えて恐かったですね。

 

【和彦の嫉妬】

自分にしかできない仕事を見つけ、自信をつけた和彦は副島さんを食事に誘い、勇気を出して自分と付き合ってほしいと告白します。返事はYES。もう幸せの絶頂ですね。

副島さんを家に送り届け、自分の家に向かう途中、閉店後の銭湯の明かりが灯っていることに気付きます。「またやってるのかな」となんとなく覗いてみると、なんとそこには同僚の松本がいるのでした。

実は松本も裏稼業の手伝いをしており、小寺の付き人のようなことをしていたんですね。
自分よりも松本の方が必要とされていることに和彦は嫉妬します。

ここはなんだか面白かったですね。
自分より先に出世した同僚に出世する感覚ですね。やっていることは殺しですけど。

結果、従業員全員で殺しの裏稼業をすることになります。

【松本の正体】

そんなある日、和彦は非番の日でしたが銭湯に呼び出されます。するとそこには既に死体がありました。松本も居ますが、もう一件殺しの依頼が入ってしまい、松本は小寺について行かなければならないので、後片付けは和彦一人に任されます。少し不貞腐れた表情を見せる和彦ですが渋々引き受けます。

小寺と松本が向かった先はヤクザの事務所。なんと二人だけでヤクザの事務所に乗り込むんですね。
ここのシーンで、実は松本は元殺し屋で、小寺に匹敵する殺しのスキルがあることがわかります。アクションや銃さばきがとてもリアルで緊迫感がある良いシーンでした。

本作のアクションシーンはこの松本を演じる磯崎義知(いそざき よしとも)さんが構成と演出を担当されているとのこと。役者業の傍ら、幼い頃からの武道の経験を活かしTA directorとしても活動されているとのことなんですね。非常に見応えがありました。

そして、このヤクザの事務所への殴り込みの際に、小寺が銃弾に見舞われ死んでしまいます。

【取り返しのつかない事態】

ヤクザの田中は、小寺の後継者として松本が任命されるのですが、和彦にも殺しのスキルを学ぶように強要します。選択肢は殺し屋になるかこの世から消されるかのどちらかしかありません。ここは恐いですね。いつの間にか和彦は取り返しのつかない事態に巻き込まれていました。

果たして和彦の運命は…

<まとめ>

【本作の斬新さとは?】

本作はここまでのあらすじから、シリアスな犯罪サスペンスのようにも思われますが、人が何人も死ぬ映画なのにも関わらず、オフビートコメディとして演出しているのが凄く斬新でした。

間の取り方や会話のやり取りやが凄く面白く、何度も笑ってしまいましたね。

また斬新と言えば、本作はある種の仕事論にもなっており、働くということについて考えさせられます。
本作は死体を解体して燃やすといったような直接的な描写がないので、普通に四六時中あくせくと働いている若者達に見えるんですね。

和彦は自分のやった仕事がこの後どうなるのかとか、どんな意味があるのかといったことは考えもせずに、黙々と目の前の仕事をこなしていきます。
仕事をしているうちに倫理感や正義感がどこかにいってしまうというこの感覚は、どの仕事をしている人にも当てはまるのではないでしょうか。

そして映画は突然、本当にお前はそれで良いのか?と和彦に、そして観客に問いかけてきます。
ここは和彦同様、事態を楽しみながら傍観者として見て来た観客をハッとさせます。本当に見事でした。

【本作の魅力は?】

あと、本作の魅力はやはり青春映画としての魅力ですね。
和彦と松本の密になって行く関係が本当に楽しかった。お互い出自も考え方も何もかも違う二人がわかりあい、やがて深い絆を結び親友のようになって行くのですが、見ててとても温かい気持ちになりましたね。

そして最後に彼らにとってある最高の時間が訪れます。
このシーンを見ながら、この時間がずっと続けば良いのになと祈るような気持ちで観ていました。
このほんの一瞬のわずかな幸福のために、全ての憂鬱があるのだとしたら、その憂鬱は受けるに値するそう思わせてくれます。

温かいラストシーンではあるのですが、やがて訪れるはずである悲劇がほのめかされて本作は終わるので、正直後味は悪かったのですが、これは傑作の余韻でしたね。本当に凄い作品でした。

こんなに多面性を持った豊かな映画が制作費300万円で作られたというのだから驚きですね。
次回作にも期待したいです。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
まだまだコロナの影響で憂鬱な日々は続くかもしれませんが、良い映画を観て一緒に乗り越えましょう!

 

画像出典:公式サイトから

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